ネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」や簡単ホームページ作成サービス「グーペ」を運営しているEC事業部では、2022年1月から各チームごとに配属されていたデザイナーを集結させ、デザイナーがチームを横断できる新体制へと移行しました。
今回は、EC事業部デザインリードのりんさんに、新体制に移行することになった経緯から、今後の展望についてお話を聞きました。
自己紹介
山林 茜(やまりん あかね)
あだ名:りん
Twitter:@getsukikyu
EC事業部 ECグループ デザインリード
二児の母。最近観た映画は「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」。めちゃくちゃおもしろいからみんな観て!!!
きっかけは、チーム間の連携不足によるユーザー体験の断片化
ーはじめに、ペパボでどんなお仕事をしているのか教えてください。
デザインリードとしてEC事業部の中長期目標に対するデザイン戦略を考え、それらを全社のデザイン方針と連携させながらデザインチームとともに実行しています。
ペパボにはデザイナーとして入社し、今年で丸11年になるのですが、デザインリードになる以前は、シニアデザイナーとしてEC事業部のデザイン全体に関わったり、プロダクトマネージャーとしてカラーミーショップの大規模機能改善や新規機能追加の立ち上げをやっていました。
ー今回新たに、デザイナーだけのチームが発足しましたが、どういったことがきっかけで作られたのですか?
EC事業部は、新規ユーザー獲得・事業領域拡大などの目的別にチームが分かれていて、昨年まではそれぞれのチームにデザイナーが所属していました。
チームの目的が明確なので、所属メンバーが主体的に動けて、プロジェクトの進捗は良かったのですが、「ここまではこのチーム、ここからは違うチーム」といった感じで、チーム間でのデザイナー同士の連携が薄くなり、本来ひとつであるべきユーザー体験が断片的になってなってしまっていると感じたのがきっかけです。
ユーザーに一気通貫した体験を提供するためには、まずはデザイナーがカスタマージャーニー全体に関わり、より深くユーザーのことを知ったうえで、体験をデザインする必要があると考え、デザイナーが有機的に動ける体制にしたいと思いました。
ーユーザー体験の断片化以外にも課題はありましたか?
採用の課題もありました。目的別の中で採用する場合、リサーチ・要件定義・デザイン設計・実装・リリースまでを所属しているデザイナー1~3名で担当する必要があり、それらをオールラウンダー的にこなせる即戦力人財が求められます。ただ、そういった人財は昨今のデザイナーの役割の細分化から市場に少なくなってきていて、採用の幅を広げるために、スペシャリスト採用やジュニアデザイナーを事業部全体で育てられる環境を整えたいと思っていました。
あとは、開発プロセスの初期段階でのリサーチの実施レベルがチームによって異なっていて、リサーチが得意なメンバーがいないチームやプロジェクトではリサーチが十分に行われておらず、立てた仮説が本当にユーザーが必要としているのかどうかが検証しきれていないという課題がありました。
そこで、リサーチをエキスパートスキルとするデザイナーを柔軟にアサインできるようにして、事業部全体のリサーチに対するマインドセットのアップデートを行いたいとも考えていました。
※ペパボのデザイナー職ではスキルエリアシステムを定めており、個々のデザイナーとしての特性を内外に可視化したり、今後どのようにデザイナーとして成長していくか考えるためのガイドとして活用しています。「エキスパートスキルエリア」について詳しくはこちらの記事で紹介しています。
デザイナーが有機的に動ける体制を目指して
ー課題解決のために、具体的にどのようなことをしたのですか?
まず、もとの体制のままで改善できないかを考えました。しかし、デザイナーのリソースを各チームでコントロールしていたので、他チームのプロジェクトに関わるには調整コストがかかってしまいます。また、採用の課題でもお話したように、目的別チームではデザイナーがオールラウンダー的に動く必要があるのですが、各デザイナーが持つエキスパートスキルを活かして有機的に動ける体制にするためには、デザイナーだけのチームを作るのがよいという結論に至りました。
実は過去にもEC事業部内にデザイナーだけのチームが存在したことがありました。
当時はエンジニアやディレクターなども職種別のチームに分かれていて、チームを越えた取り組みが進めやすくなった一方で、各施策の責任を誰が持つのかが曖昧になり、スピードが出なかったことから、数ヵ月で廃止になったという経験がありました。
しかし今は目的別にチームに分かれており、施策ごとの責任の所在が明確なので、デザイナーが横断できる体制にしても問題ないと判断し、部長とCDOに提案しました。
ー提案はすんなり受け入れられたのですか?
部長とCDOとは何度も協議しました。そこでまとまったものをマネージャー達に共有し、フィードバックをもらいアップデートを重ねて、同意を得ることができました。
デザイナーには個別に「実はデザインチームっていう形にすると、こういうところもこういう風に解決されると思ってるんですけど、どうすかねー?」と話をしたところ、同じ課題感を感じていた人が多く「それいいすね、やってみましょう!」といった前向きな反応を得ることができました。その後、チームを横断するにあたって不安や心配に思うことや、今後やってみたいことなどをヒヤリングし、準備を進めました。
ーデザインチームを新設するうえで、気を付けたことはありますか?
エンジニアやディレクターが所属する「目的別チーム」対「デザインチーム」にならないように気を付けたいなと思っていて、みんなには「with デザインチームでいこう」と伝えています。
施策の度にデザインチームに依頼しなければ進まないという形にしたくなかったので、デザイナーはもともと所属してたチームをメイン担当としてもらい、プロジェクトごとにエキスパートスキルを持っているデザイナーが必要なシーンには横断的に都度アサインしていく形にしました。事業部として上期にやることは可視化されているので、どういったプロジェクトが発生するかを把握した上で動けば、スムーズな連携は可能だと思っています。
ナレッジ共有の仕組み化とデザインシステムの推進で、プロダクト開発の質と速を上げる
ーデザインチームになってからまだ間もないですが、すでにでている成果はありますか?
ジュニアデザイナーを事業部全体で育てられる体制が整いました。
以前は、中途入社いただいたデザイナーは配属後、各チームで簡単なOJTを受けた後すぐに業務を進めていただいていたのですが、今は全社共通の中途入社デザイナー向けの共通オンボーディングプログラムを用意し、さらにEC事業部のデザイナーみんなでサポートしながら、環境構築や簡単な実務を進めていただく中で徐々に業務の範囲を広げて各チームの施策に関わってもらうという流れが作れたため、教育前提のジュニアデザイナーの採用が可能になり、採用の幅が広がりました。
ー今後のデザインチームの展望を教えてください。
デザイナーがエキスパートスキルをさらに活用できる体制になったので、エキスパートスキルごとに集まって個人が得たナレッジを他のメンバーに還元できる仕組みを作っていきたいですね。一貫したブランド体験を提供するために、デザインシステムやブランドビジョンの推進もやっていきます。
直近は特に、課題にあげていたプロダクト開発のリサーチ部分を強化していきたいです。まずは、リサーチが得意なメンバーがいないチームやプロジェクトにデザイナーが入って支援を行い、将来的にはデザイナーが入らなくてもリサーチが当たり前のように実施される文化や仕組みを作っていきたいです。