デジタルコンテンツ販売開始!リリースの裏側と今後のminneの変化について詳しく聞いてみました

minneでは2023年3月よりデジタルコンテンツの事前登録の受付を開始し、4月18日より作家・ブランドによるデジタルコンテンツのダウンロード販売を開始しました。
これまでの物品の「もの」だけではなくデジタルコンテンツも売り買いができる新たな領域へ。そんな「minneデジタルコンテンツ販売プロジェクト」に初期から携わったプロジェクトメンバーの3人にお話を聞いてみました。

自己紹介

齊藤 友美(さいとう ともみ)
あだ名:みも
Twitter:@miiiimo3
minne事業部プロダクト開発チームのPO/ディレクター。最近ハマっていることは、スプラトゥーンのサーモンランです。

王 悠夏(おう ゆか)
あだ名:おうゆか
Twitter:@ohyuka_mini
note:https://note.com/ohyuka
minne事業部プロダクト開発チームのシニアデザイナー。最近は暇さえあればゼルダをプレイしています。

佐藤 太樹(さとう だいき)
あだ名:だいき
Twitter:@doew_
minne事業部プロダクト開発チームのシニアエンジニア。寝てる時以外は暇さえあればPC触ってます。実家からピアノを持ってくる計画をしてるので久しぶりに練習してます。

minneにおけるデジタルコンテンツの強み

 minneでのデジタルコンテンツ販売開始によって、販売者・購入者にとってどういう変化があるのでしょうか。またそれぞれのユーザーにどんな変化を期待していますか?

だいき:
販売者にとっては大きな変化でいうと、まず在庫管理と発送の手間がなくなったことが大きいですね。

おうゆか:
デジタルでの販売の場が出来たことで、それまで物品の作品のみを作っていた作家さんが自身のスキルを活かして新たな領域に踏み出せるようになったのは大きな価値になるのではないかなと思っています。作家さんの挑戦、スキル獲得は期待するところの1つですね。

みも:
自分のスキルを売るという新しいひとつの手段ができたという変化はあると思います。レシピ・型紙・レッスン動画カテゴリーなどがわかりやすいですが、教えることの提供もできるようになった。従来の作品という枠ではない販売方法ですね。

ー 2022年12月に創立された「minneカレッジ」と連携してこういうふうに作品を登録していくといいよ、というのを広めていくことも今後考えられているのでしょうか。

みも:
レッスン動画の販売だったり、動画を作って販売するということに興味はあるけどそこにハードルを感じている人はたくさんいると思います。そんなときにminneカレッジが場を提供できるというのは強みに思っているので、そちらもどんどん受講生が増えてくれるといいなと思っています。

ー 購入者にとって期待する変化はどうでしょうか?

みも:
作品のクオリティの不安や、実際に届くのかな?という不安を払拭できる購入方法にはなっていると思います。すぐに受け取れるし、クオリティが明らかに思っていたのと違った、使いにくい!というのは物品より少ないのかなと。

しかしまだ、スマホやPCで扱うのにデジタルコンテンツという媒体に不安を感じる人もいるかもしれませんが、デジタルコンテンツの扱い方というのもminneから定期的に発信することで、どんどん慣れていただけるといいなと思っています。

おうゆか:
購入者向けにデジタルコンテンツ販売のLPを作って、その中でデジタルコンテンツを取り入れるとどのようないいことがあるかを紹介しています。

購入者向けデジタルコンテンツ販売LPの一部

気になる分野のスキルをデジタルで学べるようになったのも嬉しいことですし、作品を好きな形で暮らしに取り入れられるというのもデジタルという販売形式ならではかなと思います。

例えばあるイラストのポスターが販売されていたとして、イラスト自体は好みだけどポスターは自宅のインテリアに取り入れにくい、なんてケースもあると思います。しかしデジタルコンテンツであれば、購入したイラストをPCの壁紙として使ったり、ポストカードに印刷して使ったりすることができます。自分の好きな方法で生活に取り入れることができるようになったので、自由度がより高まりましたね。

あとはデジタル素材というカテゴリーが新たに加わったことで、デジタルでの創作活動がより豊かに広がっていくことも期待しています。例えば結婚式の「オープニングムービーテンプレート」や「プロフィールブックテンプレート」というような作品も販売されているので、今までやったことがないし自分で一から作るのは大変そうだけどテンプレートがあるから自分でもできた!という体験も生まれると思います。購入者側もよりクリエイティブになっていくという変化はとても期待していますね!

ー 購入者もクリエイターになれるという可能性の広がりをより感じますね!

誰でもチャレンジできるというひとつの価値が作られた

ー minneでデジタルコンテンツを販売したいという話が持ち上がったのはどういうきっかけからなのでしょう?

みも:
データ販売をしたいというニーズはかなり昔からあったのですが、それをminneとして実現するにはどうすればクリアできるのか?という課題がありました。minneはものづくり総合プラットフォームになる、というのに向けて、新しい領域をどんどん拡大していきたい。デジタルコンテンツはminneの新しい領域のひとつになりうるので、あらためて課題をクリアして実現していこうという動きがはじまりました。

ー 事業部の中でも「ものづくり総合プラットフォームになるために領域を拡大していきたい」というのが共通認識となり、浸透し、本格的に動き始めたのですね。

みも:
領域を拡大して新しいユーザーを獲得していきたいというのもそうですし、販売者の声を実際に聞いていると、売れれば売れるほど発送などの手間に追われ作品を作る余裕がなくなってしまい、作品販売以外の活動を広げてminneを卒業していってしまうという問題がありました。そんなユーザーへの新しい販売方法としてデジタルコンテンツは在庫補充だったり発送の手間がないので、「在庫分ものをつくって売る」以外の売り方を提供するというのはminneとして新しく提供できる価値になるなと思いました。

おうゆか:
最初にみもさんとカテゴリーを設計したのが印象に残っていて、minneでデジタルコンテンツを販売するならどのカテゴリーに需要があるのか、既存カテゴリーとの親和性は高いのかをまず考えました。その際に「minneだからこそ」を念頭に置いて設計しました。

みも:
デジタルコンテンツプロジェクトが本格的に動き出すことになって、機能を出すことに対してやはり不安はありました。ずっとハンドメイドマーケットを見てきたし、ハンドメイドが好きだからこそ物品の「もの」を手で作る価値はとても大きいと感じていたので、そこでデジタルコンテンツというものがユーザーに受け入れてもらえるのだろうか?という。

実際どんな反応が返ってくるんだろうなという不安はあったのですが、リリースしてみたらすごくポジティブな反応が多く、「デジタルコンテンツ、私だったら何ができるかな、作れるかな」と考えて動いている作家さんの声を多方面で見かけてすごく安心したし、嬉しかったです。作家さんたちも新しい領域へのチャレンジに前向きなんだなと。

ー SNSの反応まとめを見ましたが、確かに新しいことにチャレンジするぞ!っていう意見がとても多かったですね!

みも:
そういう反応を見たりこのプロジェクトを進めていった上で今思うことは、誰でもここ(デジタルコンテンツ)にチャレンジできるってひとつのすごい価値だなと。

物品の「もの」を作るにはハードルがあるけど、デジタルだったらもっと気軽に作れそう、という。クリエイティブの幅が広がる販売形式なんだろうなと思いますね!

おうゆか:
だいきくんもRubyファイルを作品として販売してましたもんね。

だいき:
一点、購入してもらえました。(笑)

みも:
そういういろんな人のアイデアを、登録しているのを見て初めて「こういうのアリだな!」という気付きがあるのが楽しいですね。

ー カテゴリー設計を最初に行ったという話が先ほどありましたが、ユーザーが自由に解釈して作品の幅を広げてくれた、という側面もあったのですかね。

みも:
どちらもあると思いますね。ものづくりに関わるデジタルコンテンツってなんぞやというところは、minneとしてカテゴリーを選べるようにすることで何を登録すれば良いかわからないという状態にならないようにしました。その中で自由に創作していただいています。

おうゆか:
作家さん向けに「minneで売上管理するためのスプレッドシート」などを販売されている方も見かけました。

ー それはおもしろいアイディア!

だいき:
従来だと作家to作家って「素材」カテゴリーがメインだったのですが、デジタルコンテンツ販売によって、こうやって素材以外の作家to作家のものも増えて幅が広がりましたよね。

みも:
「作家さんの販売活動に使えそうだな」っていうデジタルコンテンツ、おもしろいですよね。あと私、刺繍ミシンで使う刺繍データが作品登録されているのを見て、初めて拡張子を知りました(笑)

だいき:
ミシンのデータを作るソフトって高いんですよね。データ単体ってなかなか流通してないし、だからminneでこういうものが売れるようになったのはすごいことだよなって思いました。

新たな挑戦が随所に盛り込まれたプロジェクト、その歩み

ー 大きなプロジェクトとなりましたが、あらためて最初はどんなチーム体制でスタートしたのですか?

みも:
最初は2021年の11月くらいからディレクターとデザイナー1人ずつで、大枠の設計を考えたりしていました。カスタマージャーニーマップをおうゆかちゃんと2人で作って、2022年1月にキックオフしましたね。

だいき:
デザインとか全体設計をやってもらってる間に、僕はバックエンドの設計をしていましたね。そして2022年の年始に集結してキックオフして、4月あたりには少し関わる人員も増えたんですよね。

おうゆか:
カスタマージャーニーマップの資料、懐かしいですね。カスタマージャーニーマップって本当に大きな施策じゃないと作ることがないので、今まで作る機会があまりなかったんですよね。

今回カスタマージャーニーマップを作った理由としては、施策の影響範囲がとにかく広い、というのがありました。影響範囲を明確化するためにまずはユーザーストーリーを販売者側・購入者側のそれぞれで定義し、それに沿ってUIなどのタッチポイントを洗い出していきました。その過程で、現状のプロダクトが抱える課題や、新たに検討しなければならないことにたくさん遭遇しました。

みも:
考えなければいけないことが山ほどあったので、「何が決まっていて何が決まっていないのか?」をどんどんリスト化して、「じゃあ今日は必ずこれ決めよう!」と議題に出して着々と決めていった感じですね。その中で開発要件にあたる部分も細分化されていきました。

ー リリースまでの道のりで大変だった点、これは面白かったなという点、新しい挑戦だった点をお聞きしたいです。

だいき:
minneは2012年にできた歴史の長いサービスで、レガシーなアーキテクチャも多くなってきているのですが、デジタルコンテンツの購入・販売に関してはできうる限りモダンな技術要素を採用し開発してUXも高めるぞというところと、開発効率を上げていくぞという2点を進めました。

なので目玉なところでいうとまずは作品登録画面。あとはカートですね。特にカートの方は従来の物品購入よりもステップ数が減っているので、ユーザーにとってもすごく使いやすくなってるのではないかなと思ってます。Webの作品登録画面もモーダルが出てきてユーザーに今の処理状況などの情報を詳細に伝えたりするのは、これまでのminneでは多くなかったと思っていて、そのへんもUI/UX向上できたのではないかと。

またフロントエンドはNext.jsで作っているのですが、フロントとバックエンドを別々に開発できたのはやっぱり良かったですね。画面だけ先に作っておき、あとは繋ぎ込みできればいいというのはフロントを分離できてるからこそだなと。従来のRuby on Rails一本だとそうはいかなかったです。

開発効率向上の話にも絡んでくるのですが、作品登録画面のあとカートができあがりましたが、フロントがカート開発してたその当時バックエンドはまだ作品登録が追いついてなくて作品登録の方を一生懸命やっていました。そのあと、フロントの人員が総入れ替えというような形になってしまったのですが、依存関係が全くないわけではないけれどフロントとバックエンドは疎結に近かったので全部Railsでやるよりリソースがダブつくということがなかったのも良かったですね。

ー お話を聞く限り、minneで新しいアーキテクチャでこの数の画面を作るのって結構挑戦だなって思ったんですが、振り返ると大事な決断だったんですね。

だいき:
そうですね。あとカートは配送設定周りが今回必要ないので、どうしてもアーキテクチャ周りを見直さなければいけなかったんですよね。決済手段も限定したいという話があったので、既存のカートに手を入れるにしても大規模な開発になるという問題がありました。

もちろん既存のカートに手を入れる工数が少なかったらそちらでやるという選択も十分あり得たと思うのですが、新しくカートを作る工数より多少は少ないけど既存カート改修もほとんど変わらないくらい大変というのが調査して判明したので、そこで工数は多いかもしれないけど新しくカートを作ろうかという決断ができたのはすごく良かったと思っています。

ー プロジェクトを進める上で工夫した点などはありますか?またプロジェクトが長期化してくるとメンバーのモチベーションを保つのも課題になってくると思うのですが、チームワークを維持するためにやったことがあればお聞きしたいです。

だいき:
モチベーションの観点では、公開前の前段階として社内リリースをやったのは良かったですね。長期化してくるとどうしてもだれちゃうので、いつまでに社内リリースするぞというマイルストーンがあったことで、チームが一体になってそこに向かっていくことができました。

あと、最終的に一年以上同じチームで動くというのは僕自身入社してから初めての経験だったのですが、日に日にチームのスループットは上がっていったと思うんですよね。

例えばメンバー構成が半年ごとに変わっていたらチームビルディングをし直さなくてはならないですがそれがなく、大体同じメンバーでリリースまで進むことができたのでスループットは高い状態を維持できていたというのはあったと思います。そして後半モチベーションが下降傾向になりそうなところをみもさんにマイルストーンを打ってもらって、なんとか最後まできっちりやり遂げられたのではないかと思っています。

チームのことで困ったと思ったことはあんまりなくて、どちらかというと思ったように成果が出ないというところで悩むことは多かったですね。チーミングに問題があるのではなくて、単純に開発で障壁にぶち当たってしまって開発計画が遅れる、そっちの方が多かったです。作品の登録、検索、購入、その後のダウンロードと大きい開発で見通しを立てるというのはやはり困難だなと思いました。

なので何か大きく工夫したっていうところは個人的にはなくてどっちかというと前に述べたアーキテクチャとリソースの最適化ができた、それを決断できたというのがプロジェクトを進める上で大きかったと思います。

みも:
私自身、いろんなPDCAを回していたと振り返って思います。どうしたら立てたスケジュール通りにいけるのかというところを色々考えて動いていました。

スクラム開発(チームで効率的に開発を進めることができるフレームワーク)でいうとベロシティ(スプリントの参考値指標)をきちんと記録して、自分たちの成果とあとどのくらいのタスクが残っているのかをバーンダウンチャートという形で可視化していました。振り返ったときに達成感もあるし良いかなと思い始めましたが、これによって全員でプロジェクトの健康状態を把握でき、上長やチーム外のメンバーにも進捗共有しやすくなりました。

だいき:
そのときに可視化したグラフはめちゃくちゃ良かったですね。

おうゆか:
デザイナーとしては、チームメンバー全員の認識を揃えるために要件を素早く可視化することに一番注力しました。

とにかく対応しなければならない画面数が多かったので、最初は綺麗な画面じゃなくてもとりあえず見えるものに書き起こして、全員で一緒に見ながらスピーディーに意思決定をしていけるよう心がけました。何も見えるものがない状態で仕様について話していると解決策が見えづらかったり、細かいところで認識の齟齬が起きやすかったりしてしまうんですよね。すぐに可視化をして全員の意思決定のための材料を作る、というのはデザイナーとしての一つの使命なのかなと思っています。

デジタルコンテンツをもっと親しみやすいものに

ー 最後に、デジタルコンテンツ販売の今後の展望を教えてください。

だいき:
これまでminneに出品してこなかったような人にもどんどん出品してもらえると嬉しいですね。そして購入者が買いたいものに出会えるよう、検索周りの使いやすさだったり購入ステップの利便性を今後も高めていきたいと思います。

おうゆか:
売る側にとっても買う側にとってもデジタルコンテンツがより親しみやすいものになっていくといいですね。出たばっかりでそもそもデジタルコンテンツが買えるということもまだ浸透していないと思うし、自分に無縁のものだと思っている人もいるかも。その距離を縮めていけると良いですね。

みも:
プロジェクト開始当初から、「ものづくりにまつわるデジタルコンテンツってなんだろう?」と自分や周りに問い続けてきました。

型紙・図案のPDFやレッスン動画、待ち受けイラスト以外にも、いろいろな可能性が秘められているなと考えています。minneが企画などでコンテンツアイデアの提案を行いつつ、作家・ブランドのみなさまに登録いただいたデジタルコンテンツからも着想を得ながらサービスに取り込んでいきたいです。

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