前提に問いを立て、理想を描き、形づくる。ディレクターの“デザイン力”を育む新卒研修レポート

「デザインすること」は、すべての職種に開かれている

突然ですが、「デザインすること」は誰の仕事だと考えますか?

多くの場合は「デザイナーの仕事」と答えるかもしれません。もちろんそれも正解です。しかし私たちGMOペパボでは、「前提に問いを立て、理想を描き、それを実現するために物事を形づくる行為」のすべてを“デザイン”と捉えています。

つまりサービス開発、機能改善、業務効率化など、職種を問わず日々の業務の多くは「デザインする行為」の連続であり、ディレクターもまたサービスを形づくる中心的な役割を担う存在です。

近年では、CanvaやStudioのようなノーコードツールや生成AIの進化により、かつては専門職だったデザイン作業が急速に民主化され、ディレクターが自ら手を動かして制作を行う場面も増えてきました。

今回実施した新卒ディレクター向けのデザイン研修は、まさにこうした背景のもとに設計されました。目的は、業務の中でCanvaやStudioを使いこなし、デザインの視点をもってアウトプットできるようになること。ディレクターとして、自身の施策を前進させる“手を動かす力”と、“デザインを見る目”を養うための、実践的なプログラムを実施しました。

研修内でハンズオンのサポートを行った2人が研修の内容をレポートします。

自己紹介

ねもっちゃん
X(旧Twitter):@_nemozzz
事業開発部 Alive Projectチームのデザイナー。VTuberとプロゲーマーの配信を見るのが日課。最近はスト6にどっぷりハマってます。

ゆうきち
X(旧Twitter):@yukichi_tzu02
事業開発部 Alive Projectチームのデザイナー。将来は女子高校生VTuberとして年齢に逆らっていきたいです。

「手を動かすディレクター」を育てる5日間の研修プログラム

本研修では、ツールの操作を学ぶだけではなく、デザインの目的や意味を考えることにも重点が置かれていました。参加した新卒2名は、座学と演習を通じて日々着実にスキルと視座を高めていきました。ここからは、サポーターとして伴走した私たちの視点で、その5日間の様子を振り返っていきます。

Day 1|Canvaで名刺をつくってみよう

ねもっちゃん:
初日は、ペパボにおける“デザイン”の定義からスタート。shoさんによる座学では、デザインという言葉が「形をつくること」から「問題解決」、さらには「問題発見」へとシフトしてきた流れを、歴史も交えて丁寧にインプットしてもらいました。

デザイン思考についてのお話では、すぐに実務で活かせる具体的なヒントが満載でした。普段の業務で取り組む、正解のない「厄介な問題」に対して「問題定義」「意味づけ」「仮説と対話の原案」「共通理解の形成」という4つのアウトプットが求められていること。
そして、チームを動かす「よい仮説」とは「実際に検証可能で、観察・共感とリンクし、対話の出発点になる」という解説は実践的で、観察から仮説を導く「仮説推論」とセットで学ぶことで、すぐにでも使える思考の武器になったはずです。

プリンシパルデザイナーのshoさんを中心に、同じくプリンシパルのsoyさんとシニアデザインリードのojieeさんが講師として研修を担当。企画時は、DPM(デザインプログラムマネージャー)のmewmoさんも含めた力の入ったメンバーでした!

演習ではCanvaを使って名刺を作成。新卒の2人は、操作方法を学ぶだけでなく、名刺というものの役割を理解しながら「どうしたら相手に印象を残せるか?」「誠実さってどうやって表現するんだろう?」といった視点をもって制作していたのが印象的でした。

たとえば、見やすさや配色のバランスだけでなく、文字サイズや写真の配置にまで意図を持たせようとしていて、「目的から逆算してデザインを組み立てる」という思考が初日から見えていて驚きました。

名刺作成演習のデザインブリーフ

Day 2|Webサイトの構造を考える

ゆうきち:
デザインする際には、ただ見た目をつくるだけでなく、「なぜこの構成なのか?」を考えるプロセスがとても重要です。そこで、「情報設計」の座学と演習を通じて、構成の考え方や情報の優先順位、情報を見る視点などを学んでもらいました。
まず座学では、世の中にあるWebデザインやアプリケーションのUIの構造を講師陣と紐解きながら、情報設計時のプロセスの流れをインプット。

参考:https://www.apple.com/jp/macbook-air/

新卒の2人は「情報設計は相対的に順位づけられることが、世の中のクリエイティブを見て理解できた」と学びを得ていました。

演習では、ヒアリング内容をもとにStudioを使ってWebサイトのワイヤーフレームを作成。新卒の2人は、頭の中にある構想をいざ形にしてみると「思ってたのと違う……」と悩んでいる場面も多く、特にレイアウトの作り方やページ最上部で何を見せるべきか、といった部分に苦戦していた様子でした。

それでも午後には、自分で仮説を立てて作り、つまずいたところを調べて修正し…というサイクルを自然と回せていて、その吸収力に驚きました。参考になるWebサイトを分析しながら、「このサイト、なにがいいんだろう?」と自分の中で分析している姿勢が見られて、視点が確実に変化していることを感じました。

Day 3|レイアウトの基本と“視覚の重さ”を学ぶ

ねもっちゃん:
3日目は、デザインの基本原則と言われることも多い「近接・整列・余白」や、レイアウトの“重さ”や“バランス”についての座学から始まりました。講義では、要素をグレースケールにしたり、ぼかしてみることで「視覚的な重さ」といった定性的な要素の理解の仕方も紹介され、実践的かつ自分にとっても発見の多い内容でした。

その後の演習では、前日のワイヤーフレームにビジュアル要素を加えていき、ムードボードの作成まで行いました。新卒の2人は、レイアウトの重さや情報設計の観点を意識しながら手を動かしていて、どの要素をどこに置くべきか、構造と見た目の両方を意識したアウトプットができていました。

実際に作成したムードボード

すでにStudioの操作にもかなり慣れていて、手が止まることなくスムーズに制作している様子に、ここまでのインプットが着実に身についているのを感じました。わからないところは積極的に調べながら進めていて、とても頼もしかったです。

Day 4|レビューで鍛える「見る目」と「伝える力」

ねもっちゃん:
4日目は「伝える力」を学ぶ回。色彩設計についての座学で、「使う色数や比率を変えるだけで印象が大きく変わる」といった考え方をインプットしたうえで、制作物のレビューをする課題に挑戦しました。

レビューのロールプレイングでは、用意されたバナーやサイトに対して、これまで学んだ原則をもとにフィードバックを行いました。ここでは過去に社内で行われたデザインレビュー勉強会の資料を確認しながら、レビューの意義についてインプットしたうえで取り組みました。ディレクターは入社後、デザインレビューをする機会が突然訪れることもあるので、実務前にこの体験ができるのは貴重だと思います。

新卒の2人は、制作物の良いところをしっかり言語化したうえで、「もっとこうしたらよくなるかも」と根拠を持って伝えていて、レビューとして非常に的確でした。わたしもこのワークに参加しましたが、先輩デザイナーたちのレビューの視点や伝え方がすごく参考になって、実務でも活かせそうだと感じました。

先輩デザイナーによるレビュー例の抜粋

Day 5|「誰にどう届けるか」を考えながら、チラシを完成させる

ゆうきち:
最終日は、これまで5日間の学びを総動員して、自力でチラシの制作に取り組んでもらいました。研修で学んできた情報設計やビジュアルをつくるための考え方を活かしつつ、新卒の2人が自らの力で制作を進められるようにサポートすることを目指しました。

最終日全体を通して新卒の2人がアウトプットの質を高めるために、主体的に動いており、自走する力が格段に上がっているのが印象的でした。

まず感心したのは、制作に取りかかる前にしっかりとスケジュールを引き「どのように進めたら完成させられるか」を常に意識していたこと。目的から逆算して行動しており、制作の進め方自体が研修初日と比べて大きく変わってきていました。

デザイン壁打ちの時間では、「このチラシを誰が見るのか? どんな気持ちで手に取るのか?」といった、ユーザー視点に立ち返る場面が多く見られ、伝え方へのこだわりも感じられました。それに感化された講師陣やサポーターも、熱がこもったレビューやアドバイスをしていて、踏み込んだ議論が展開されていました。

自身もサポーターとしてできることを考えながら、実際に演習に参加して先輩デザイナーからレビューを受けてみたり、一緒に手を動かすことで、レビューのプロセスや考え方を近くで見てもらえるように意識していました。最終日は特に「自分で作り上げる力」が求められたので、“共に走る”ことを意識してサポートしていました。

研修の最後は作成したチラシのフィードバック会と、振り返り会をしました。

アウトプットしたデザイン

フィードバック会では、新卒の2人共がデザインの意図をしっかり説明しており、講師陣、デザイナー陣からはアウトプットだけでなく、デザインプロセスの言語化の点についても高い評価をもらっていました。私自身、フィードバック会に参加しながら、5日間という短い期間での新卒の2人の成長ぶりを見て、本研修が2人の学びとして活かされたことを実感できました。

振り返り会では、新卒の2人から「デザイン研修が楽しかった!」「まだ終わりたくない」という声をもらって、胸がいっぱいになりました。新卒の2人からデザインに対しての熱意と研修の満足感をひしひしと感じられて、今回サポーターとして参加することができて本当によかったです。

研修をふりかえって

ゆうきち:
デザインプロセスを「体験して学ぶ」構成になっていたこの研修で、新卒の2人が主体的にどんどん吸収して実践していく様子が本当に頼もしかったです。特に、課題に取り組む中で他者と共通認識を揃えたり、考えたことを言語化して伝えようとする姿勢が強く印象に残っています。仕事はチームで進めていくものだからこそ、こうした姿勢はこれからきっと役に立つはず。私自身も共に手を動かすことで、新たな視点を得ることができました。

ねもっちゃん:
濃密な5日間だったな〜と改めて感じています。座学を通じて「考え方」を学び、演習でそれを実際に体験するという流れがとても良くて、私自身にも新しい気づきがたくさんありました。新卒の2人はどのワークでも前のめりに取り組んでくれて、しかも吸収したことをすぐに活かそうとしていたのがすごく印象的でした。研修が終わったあとに「もっとやりたい!」と言ってくれたのがうれしかったし、デザインの楽しさを改めて感じられる時間でもありました。

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