元エンジニアが給与計算の時間を1/3にした話

最近「HRテック」というキーワードをネットで見かけるようになり、その流行りに乗って、今回は元エンジニアがバックオフィスに異動し、フローの見直しなどをして給与計算に掛かってた時間を1/3にした取り組みや、他の取り組んだ業務改善の話をします。

僕ってこんな人

渡辺 悟(わたなべ さとる)
Twitter: @crosside
あだな:なべ
HR統括部 HR統括グループ 福岡人事チーム サブマネージャー

キャリア

2005年入社でペパボ14年目になります。建築設備の設計者として社会人スタートして、ペパボ入社時の職種はエンジニアでした(もうペパボの中では古株になるので、パートナーのほどんどは僕がエンジニアだったことは知らないと思いますが・・) それからサービスのマネージャーなどを経て、現在は福岡オフィスで人事労務をメインに担当しております。

こんな僕ですが、ペパボに入社してからのエンジニアとしてのキャリアが、現在のHR部門のテック化を進めるにあたり大変助かっており、今ではテック化推進マンのような立ち位置で日々の業務に取り組んでます。

なので、ほぼ毎日エンジニアか?!っていうくらいGAS( Google Apps Script )のスクリプトエディタをモニターに開いてます。

給与計算に掛かってた時間を1/3にした話

今から5年ほど前、まったく人事労務の知識のない状態で人事に異動した僕は、イチから人事労務業務のレクチャーを受けました。そこで見たのは、エクセルファイルの数と手動入力作業の多さ、記憶に頼った属人化してる作業の塊で、とても衝撃を受けたことを覚えています。。

特に衝撃だったのが、給与処理に必要な勤怠チェックが “紙” で行われてたこと。勤怠システムから全パートナー分の出勤簿を1人1枚で印刷して、それを1人づつ打刻漏れなどチェックしてました。東京、福岡合わせて350枚近い出勤簿を手分けしてチェックして手書きで漏れを記入し、打刻漏れ・ミスなどあれば1人づつSlackで声がけして訂正してもらってました。このチェックだけで4人で半日掛けてやってました・・(紙も勿体ないっすね)

「勤怠データ自体はクラウドサービスにあるのに何で紙なんだ?そんなことあるかーい!」って設定を見てみるとCSVでデータエクスポートがメニューがあるじゃないですか。じゃあ、それ使ってチェックすればいいんじゃないの?

ということで、主にGASを使って、以下の自動化したら実質、勤怠のチェックには誰も要らなくなっちゃいました。(通知が飛んでも対応してもらえないパートナーにアナウンスするのみ)

また、手入力の多さということでいうと、身上異動届を元に給与変更を行う場合もひどく工数がかかっていました。

①その月のパートナーの身上異動などの変更情報を手入力でスレッドにまとめる、②さらにそれをエクセルファイルに手動で転記、③さらには給与システムにこれまた手入力で登録する、といった具合にすべてが手入力。

手入力はミスも発生しやすく、その入力内容をチェックするのもかなり重労働でした給与データの締め時間が迫る中、最終的に明細まで出して間違いに気付いてやり直しが深夜までかかることもありました。 こんな調子なので、締日となる月末月初が休日でも必ず出社しないと給与計算が間に合わず、当時は月末月初を迎えるのがストレスでしたね。

「給与システムにもCSVインポートあるんじゃね?」って調べたらあるし、手動で入力するのは一度にして、そのデータには人の手を加えず給与システムに反映させれば一度チェックすればいいだけじゃん!

ということで、エクセルファイル管理から、すべてG Suite上のスプレッドシートで管理するようにして、その月の異動・昇給などの変更情報や身上異動などのスプレッドシートに記入してから、その入力データをシステムに一括インポートするためのフォーマットに変換したCSVまで自動で出せるようにしちゃいました。

改善後は手動入力1回になり、その入力チェックをするだけで良くなったので、全行程を手動で行ってた時よりかなりの工数削減を計れました。

どれくらい削減できたかというと、給与計算完了まで4日程度掛かっていたのが、1.5日程度で終わるようになり、掛かってた時間が1/3になりました。それも4人とかで掛かっていたものが今では実質2人で。 このお陰で月末月初の休日出勤はなくなりました。(年間カレンダーをにらめっこする必要がなくなったこの部分がストレス軽減の中で一番大きい!!)

進めた他の改善

入退社管理通知ツール

人事が入退社情報をスプレッドシートに記録すると、いい感じに関連部署に通知がいくツールです。人事がシートに入力すると、関連各部署チームのSlackのチャンネルに通知が飛び、Googleカレンダーにも自動登録され、その後、シートのチェック項目を対応が済むごとにチェックしていくことで、必要な案内が各位に通知されます。

複数人一括slack通知ツール

人事から個別に複数人に案内が必要なことがありますよね。slackAPIでslackIDを引っ張ってきて社員台帳と合わせたリストを用意して送りたいパートナーを選択して、送信内容を記載し送信ボタンを押せばDMで一斉送信されます。個別に日にちとか変わる場合の変数にも対応しています。

各種リマインダー

タイマー設定して、いろんなリマインダーを作りまくってます。(担当者も自動更新通知)

こんな感じで、いろいろ改善を進めて、チームメンバーには労務作業のイノベーションということで「ナべーション」 という呼び名で呼ばれています。今は人事厚生チームだけでなく、採用チームのテック化相談もおこなっており、自身の能力が色々な場面で発揮できることを嬉しく思っています。

元エンジニアから見たバックオフィス業務

バックオフィス業務って、「以前からこうしていたから」とか「こうあるべき」っていろんなことが慣例になっていて、いかにもこれが常識のように思えるような業務フローなんですよね。担当者も改善したいと思ってるけど、その技術を知らないから、 何をどうすればいいのかわからなくて改善にいたれなかったり、忙しいけど業務時間内に業務が終わってしまえば、改善しようと思わないこともあると思います。

僕も異動したばかりの頃「給与の業務はこういうものです」と教えてもらったことに「本当にこのやり方でやらなきゃいけないのか?」と疑問を感じつつも、規程や法律の理解も浅い中で給与計算フローを改善するっていうのは、怖くて改善に手がつけれなかったです。だって給与なんて1円でも間違えると大変なことになっちゃうので・・

なので、半年くらいして一連の業務の意味を理解してきて、やっと「この作業要らないんじゃない?」「この処理飛ばして良くない?」といって実際の改善を進めることができました。

HRテック化を進めるにあたって気をつけていること

僕がHRテック化する際に気をつけていることは、非エンジニアのチームメンバーにも何が行われているのか判る改善です。すなわちGASのスクリプトは出来る限り使わなくてゴールを出す改善です。

例えば、ある人事データリストから条件で抽出し整形されたcsvを出すというスタートとゴールがあったとしたら、エンジニアにかかれば、プロセスをすべてサーバ側にスクリプトで書いてゴールのcsvを一発で出すことができます。またHRシステムを導入することで簡単にゴールを導くことが出来ることもあるでしょう。

ただそうしちゃうと、途中のプロセスで何が行われているかは非エンジニアには理解できず、僕がいないと・・っていう状況になってしまいます。なので、スプレッドシートとGASを使って改善していますが、関数でできることは関数を使い、関数で出来ないことだけGASを使って、非エンジニアのメンバーにも何が行われているか目に見えて判るように心がけています。

またメンテナンスもしやすように、一時的に途中の数値の過程をシートに出力したりしています。そうすることで、メンバー各自が行ってる作業に振り返ってみて「これも改善できそう!」ってイメージができるようになり、僕に声を掛けてくれたり、また「こんな関数だったら自分でもできるかも!」って自ら積極的にテック化に取り組んでくれることで、チーム全体のテックのスキルアップにも繋がってると思います。

これからバックオフィスにエンジニアを置こうかと思ってる方へ

最近のHRテックに流れに乗って、エンジニアをバックオフィスに置いてみようと思ってる企業もあるかと思います。

僕の経験からもしアドバイスをするならば、部門・職種は別のままでエンジニアとして業務改善のためのお手伝いっていう立場でなく、部門・職種とも管理部門として異動して、バックオフィス業務を実際に行い理解してもらうことをオススメします。

こうすることで、バックオフィス業務が自分ごとになり、細かなちょっとしたかゆいとこにまで手が届く改善が進められると思います。(バックオフィス業務はエンジニアが思う以上に法律も絡んだりして複雑で特殊なので。。)

最近進めていること

最後に、最近進めていることを紹介します。ペパボでは人事へのお問い合わせをSlackで受付しているのですが、そのSlackの人事チャンネルに届く問い合わせ・相談の対応をスムーズにご案内できるよう、よくある質問については自動で返答する “人事答えるくん”を作成してます。こちらはチームメンバーとOKRを導入して改善を進めているので、またこのブログで近々紹介しますね。

今までは人事業務を主に改善していきましたが、これからは、総務、法務、経理などバックオフィスって人事データを流用する事が多いと思うので、皆を巻き込んで業務を効率化を進めれたらいいなと野望を持って日々業務に取り組んでます。

以上になりますが、何か気になったことがあれば気軽にSNSででもお声掛けください〜 最後までお読みいただきありがとうございました。