東証一部企業となったGMOペパボの新たな挑戦とは。2021年の意気込みを社長に聞いてみた

2020年は世間では新型コロナウイルスの影響でさまざまな変化が起こり、GMOペパボでもリモートワークへの切り替えや東証一部への市場変更などが行われました。

今年最初のHRブログのインタビューでは、社長のケンタロさんに2020年のふりかえりと2021年の意気込みを聞いてみました。

佐藤 健太郎(さとう けんたろう)
twitter: @kentarow
あだ名:ケンタロ
代表取締役社長。毎年の正月、駅伝をみた影響でランニングを頑張ろうという気持ちが高まるのだが長続きしないので、この気持ちが続くにはどうすればいいかを考えているところ。

リモートワークは、生産性が高く、多様性のある働き方を目指していくうえでの通過点

ー2020年、ペパボはリモートワークを基本とする勤務体制へ移行しました。どのような経緯でこの決断をしたのですか。

ケンタロ:
2020年を語る上で新型コロナウイルスの影響は避けて通れない話ですが、ペパボはコロナがあったからリモートワークを始めたというわけではありません。リモートワークへの切り替えは数年前から検討し、移行に向けてHRを中心に調整を進めてもらっていたことなんです。

ただ、5年後か10年後か、数年先のものだと考えていたことを2020年に導入したというのは、結果的に大きな変化の1つになったと思います。

我々の業界や、手掛けているビジネスは、常に新しい考え方・やり方でないといけないと思っています。そのために生産性が高く、多様性のある働き方を目指していくうえで、リモートワークの導入は1つの通過点だと思うんです。

新型コロナウイルスの影響で大多数のパートナーが出社を控えざるを得ない状況下で、リモートワークを基本とすることによって、全体の生産性を下げないようにしたのが2020年にとった戦略です。

ただ今後、「オフィスで仕事するほうが生産性が上がる」というパートナーも出てくると思います。そこに対して「絶対に出社しちゃ駄目」と強制するのではなく、会社としては、パートナーが生産性高く仕事ができるよう、多様な働き方に対応するためのやり方を考えていく必要があると思っています。

ーリモートワークに切り替えてよかったことはありますか。

ケンタロ:
たとえば東京オフィスと福岡オフィスをつないだ会議で、東京オフィスからの参加者が多い時、議論をしている大多数が東京のメンバーで、その様子を画面越しに福岡のメンバーが見ている、という構図になることがありました。でも、今はみんなが画面の中で一対一対一なので、そういう部分でのコミュニケーションはしやすくなったと思います。

ーリモートワークに切り替わったことで、ケンタロさんがパートナーと接する際、心がけていることはありますか。

ケンタロ:
依頼のタイミングや伝え方に気をつけるようになりました。

これまでは、なにか用事があると自分からパートナーの席に話しかけに行っていました。直接コミュニケーションをとることで、緊急かそうじゃないかというニュアンスも、自分の表情や雰囲気などから伝えることができていたと思います。SlackやZoomで自分から連絡がくると緊急案件に思われてしまうので、特にリモートワーク下においては、タイミングや言い方とか、伝え方を考えるようにしています。

ープライベートな部分では、なにか変化がありましたか。

ケンタロ:
家に対する考え方が大きく変わったと思います。

これまでは寝るとか着替えるとか、生活するためだけの場所だったのが、仕事をする、ストレスを解消する、運動するなど、さまざまな役割を担う場所になりました。

自分はサウナが好きなので、水が貯められるビニールの桶を買って水風呂に入れるようにしたり、ベランダを片付けウッドデッキにして、家でも交互浴でととのえるようにしました。そういうことって、たぶんコロナ禍じゃなかったらしてなかったと思います。

ーリモートワーク以外だと、2020年は東証一部への市場変更もありました。こちらについてはいかがでしょう。

ケンタロ:
社内的には、そんなに大きな変化はないと思いますが、我々が東証一部へ市場変更した目的は、資金調達の能力や、社会的信用力、あるいは知名度を上げて、事業を成長させるためです。今後はコーポレートガバナンスコードの対応の内容や社会的に要請されるものも増えてくるので、これまで以上にしっかりと対応していきます。

今がゴールではないので、継続した成長をしなければとも思っています。一部上場企業の中でも、売上高100億円規模のペパボはまだまだ下の方なので、さらに成長意欲をもって、売上・利益も伴うような会社にしていきます。

ーほかにも2020年、ケンタロさんが考えたことはありますか。

ケンタロ:
アナログなところも変革していく必要性を感じました。困っている方々に対して何かもっとできることがあるのではないかと、2020年は今まで以上に考えた1年でしたね。

新型コロナウイルスの影響で、お店を開けなくなったり、イベントを中止したり、お客さんが来なくなったりした方は非常に多かったと思います。

今までも、自然災害の影響を受けた方々に対して、支払い猶予を設けたりといった救済措置はしていましたが、それ以外のことも動かなければと感じ、実際に各サービスでさまざまな取り組みも行いました。

「成長」をキーワードに、やり方を変えていく

ー様々な変化のあった2020年を踏まえ、今年度新たにチャレンジしてみたいことはありますか。

ケンタロ:
そうですね、東証一部に市場変更したという部分が大きいかもしれないですが、これまで以上に成長を意識しようと考えています。

2014年に、2019年までの5年間の計画を立てていて、実は東証一部への市場変更は計画の1年遅れで達成しました。昨年、新たに2020年から2025年までの目標を策定し、それに向かって動いていますが、やっぱりストレッチした数字にはしているし、定性的な部分も含めて、今までとは違うやり方をしないと達成できないと思っています。

2014年ごろのペパボ の様子

ー「成長」が1つのキーワードになると思うのですが、今改めてパートナーに求めるものはありますか。

ケンタロ:
前から言っていることにはなりますが、会社も組織も人も、有機的な成長が必要です。事業だけが成長していったら、多分ついてこられないパートナーが出てくると思うんです。全員が事業成長についてこられるように、みんなにも常に成長意欲を持って欲しいと思います。

我々の業界では、5年前にやってたことが通用しなくなることって平気であるので、やり方が変わるというのを前提で物事を考えないといけないと思ってます。

ー確かに、2015年のペパボと今は全然違いますし、2025年は会社のフェーズも人数も全然違いますよね。

ケンタロ:
今パートナー数は500人目前ですが、たぶん1,000人の会社になった時は、仕組みややり方も変えないといけないと思うんですよね。事業も同じで、今は売上高100億円ですが、今後500億円、1,000億円に成長した時には絶対今のやり方では通用しないし、求められるクオリティも上がるので、本当にオーガニックに成長するって難しいです。

経験だけでは絶対に無理で、より良い手法を学習して吸収していかないといけないなと思っています。

個人的にも「やり方を変えないといけない」と強く思っていて、継続して高い成長が実現できている会社のしくみを今すごく研究しています。 

ペパボってすごくいい会社で、いいカルチャーを持っていますが、事業成長に関していうと、まだまだ改善の余地があり、今が事業の成長のさせ方を大きく変えるチャンスかなと思っています。

ネット系からテック系へ。変化を恐れず、成長できる人と働きたい

ーこれからペパボの仲間になる方に、求めるマインドはありますか。

ケンタロ:
まず大きな要素の1つとして、我々は「みんなと仲良くすること」を大切にしていています。オフィスでコミュニケーションをとれていた時は、何となくのニュアンスでも成立していたことも、これからはインターネット上のコミュニケーションをうまく活用しないと難しくなってきます。SNSや社内のコミュニケーションツールでもいいので、積極的に社内外で関わる人達とコミュニケーションを取ることって重要だなと改めて思っています。

500人規模の会社になってくると、絶対に埋もれてしまう人も出てくると思うんです。YouTube をやったり、ブログを書いたりと、開かれた場所で自分を知ってもらうためのアウトプットができているパートナーもいますが、そういうのって一種のスキル的なものなのかなって思いますね。

自然にアウトプットできる人にとってはなんてことないことですが、これから始める人にとっては結構ハードル高いと思います。でも、これからはそれができないとちょっと厳しい気がしています。

そしてこれって、ペパボが掲げている“わたしたちが大切にしている3つのこと”が完全に体現されるっていう話だと思うんですよね。

ー他には何かありますか。

ケンタロ:
やはり「成長」という部分は大きいなと思っています。組織としても成長しようというタイミング、かつ世の中も大きな変革が起きている今、ペパボは「ネット系企業からテック系企業」に変革しようと取り組みを行なっています。

「ネット系だから自分達は最先端」って思い込みがちですが、もう全然そうじゃなくなってきているので、やり方を変えていく。それって個人の成長が不可欠だと思うので、意欲をもって学習して、変化を恐れないでほしいです。

ー速い変化に適応していくために、ケンタロさんが普段から意識していることはありますか。

ケンタロ:
好奇心を持つこと、何事も自分がワクワクできることにする、というのは意識しています。

知らないことを理解するために、まずはやってみるというのは重要なアクションかなと思います。

あとは“常に謙虚に”ということが重要かもしれないです。今までやっていたことを否定されたり、大切だと思っていたけど「違う」となった時、やっぱりみんな今までのやり方を守りたくなるけれども、変化は謙虚に受け止めて、自分とは違う意見に素直に耳を傾けるという姿勢も重要だと思います。

まあ、言われるとむかつくなーってことも、もちろんあると思いますけど。(笑)

ー2021年がスタートしましたが、最後に今の気持ちを一言お願いします。

ケンタロ:

東証一部に市場変更したことで、緊張感を持っています。プロジェクトメンバーには達成感を味わってもらいたいと思うし、自分自身もある程度の達成感はあります。だけどそれ以上に、改めてここからだという緊張感があります。

あと、リモートワーク自体は、多様性に対応し、生産性の高いチームを作るための一つの手段でしかないと思っています。

リモートワーク下で、いかに業績や文化レベルをあげていけるかが重要なので、さらに研究していかないといけないですね。