学び続けることで、新しい視野と価値を生み出す。ペパボ社会人学生インタビュー

ペパボには様々なバックグランドを持ち多様な働き方をするパートナーが多く在籍しています。今回はペパボで働きながら大学院へ通う、社会人学生の3人にお話を聞きました。

自己紹介

栗林健太郎(くりばやし けんたろう)
あだ名:antipop
Twitter:@kentaro
取締役CTO。北陸先端科学技術大学院大学博士前期課程在学中。最近ハマっていることは、「青天を衝け」からの、明治の財界事情について調べること。

三宅 悠介(みやけ ゆうすけ)
あだ名:miyakey
Twitter:@monochromegane
CTO室研究開発チーム プリンシパルエンジニア。九州大学大学院システム情報科学府博士後期課程在学中。最近ハマっていることは統計モデリングです。Goも書きたい。

黒瀧悠太(くろたき ゆうた)
あだ名:kurotaky
Twitter:@kurotaky
SUZURI事業部 シニアエンジニアリングリード。横浜国立大学大学院理工学府博士後期課程在学中。最近ハマっていることは回路設計、信号処理です。

「いつか大学院に通って…」に踏み切ったわけ

ーまず、自己紹介をお願いします。

antipop:
CTOをやっています、あんちぽです。普段は、CTOとして全社の技術的な方向性の舵取りをしています。

またペパボ研究所の所長も務めています。研究所では、自分自身が研究を直接するというわけではなく、研究員の皆さんの活動を支援するということをやってきたのですが、この度自分も大学院に入って、研究そのものをやろうとしています。

miyakey:
ペパボ研究所で研究員をやっていて、研究としては「情報システムの自律適応」をキーワードに研究をしています。

ペパボ研究所では「研究開発により「事業を差別化できる技術」を生み出す。」というミッションを掲げており、ビジョンである「なめらかなシステム」を実現するための要素技術を研究しているところです。

また2020年10月に九州大学大学院に入学し、同様のテーマで研究を行っています。

kurotaky:
普段はSUZURI事業部で、シニアエンジニアリングリードをしています。SUZURIというサービスを様々なユーザーさんに使ってもらうために、技術的な改善をしたり新しい機能を作ったりといった、エンジニア組織としてのアウトプットを最大化するために必要なことを考えています。

大学院での研究では、人間とコンピュータのやり取りをもっとなめらかにするためのウェアラブルデバイスの研究を行っています。
今後いろいろなデバイスが出てきて、様々なタッチポイントでコミュニケーションとっていくようになると思うので、そこへ向けた研究開発です。

ーなぜ2020年のタイミングで進学されたのですか。

antipop:
僕は特にこのタイミングというのは考えていなかったですね。

ーそうなんですね、突然思い立って進学したんですか?

antipop:
もちろん進学した理由はあって、2016年にペパボ研究所を立ち上げ、所長をやってます。先ほども話したように、所長として皆さんの研究活動の支援を行っていますが、年々研究員や周りのエンジニアのレベルがどんどん上がっていく中で、やっぱり自分自身もプレーヤーとして何か実績を作ったり、研究活動をしてレベルの向上をしないと、組織を成長させられないという思いがあって進学しました。

なぜ去年の4月だったかというのは、早ければ早い方が良いと思っていたのですが、なかなか時間や都合がつかず、進学に踏み切れていなかったところを、改めて「早い方がいいよね」と思い昨年のタイミングになりました。

ーお二人は何かありますか。

miyakey:
僕はペパボ研究所に入って「研究って何だろう」というところから、手探りで研究を始めたので、いつか博士課程に行って、研究方法を学びたいという気持ちがありました。

ただずっと研究がわからなすぎて「学校に行ってもできるんだろうか」と自信がなかったんです。

それでも去年やっと査読付きの論文がアクセプトされ、1つ研究員としてスタートラインに立てたという自分なりの自信みたいなものが持てたので、改めて「この道でやっていきたい」と思い、このタイミングで入学を試みました。

kurotaky:
僕は大学院の修士課程に通っている頃から、博士課程に進学しようかと考えてはいたのですが、当時は研究するよりも企業で働いてみようと思って、ペパボに入社しました。

約9年間エンジニアとしてペパボで働きながら、「人がシステムやコンピュータを使う時にどうするともっと良い関係を築けるのか」ということをずっと考えていました。

今後、今よりもさらに、様々なモノがインターネットと繋がって、人間とやり取りするようになっていくと思います。そうなった時、今持っている知識や技術だけでは、新しいものが生み出せないと思っていて、デバイスやセンサーなどの人間に近い領域の技術と知識を身につけて研究していきたいなって思ったんですよね。

事業として必要だからというよりは、これから未来を考えたときに、人間とコンピュータがもっといい関係築くためには、今僕が研究して僕が創り出した方がいい未来が作れそうだなという気持ちになったから進学しました。

ー学校へはどのくらいの頻度で通われていたり、どのようなスタイルで授業や研究を進めているのですか

antipop:
僕は博士前期過程なので、結構授業があって、土日に授業を受けていました。また僕の場合は完全リモートになったのでほとんど学校には行かず、授業も毎週やりますけど全部オンラインでした。

miyakey:
僕は授業は無いです。博士論文に向けて指導教官からの指導などが単位になります。

後は論文を国際会議に出して発表する流れを通して単位になったりするので、基本は博論にむけて研究を進めています。僕も入学式以降1回も学校には行っていないですね。

kurotaky:
僕も授業は基本ないです。1個だけ興味のある授業を取ってみたんですけど、その1個だけでも、仕事との両立が結構しんどかったんで、antipopさんはすごいなーと思っています。

今は全部研究活動という形で、SlackやTeamsで先生とディスカッションをしたり、相談したりなどはあるのですが、研究で進捗を出していくのがメインですね。

ーみなさん研究は夜や週末にされることが多いのですか。

antipop:
僕や kurotaky はそんな感じです。一方で miyakey は研究者というお仕事をされていて、研究で成果を出すという役割を担ってもらっているので、もちろん miyakey も夜遅くまでやることもあると思いますが、業務の一環として成果を出していただいて、それを評価するという形で、進んでますね。

ーmiyakey はペパボ研究所で取り組んでいる研究を研究室にも持ち込んでやっているんですね。

miyakey:
はい、会社のサポートというのが、そういう形で受けられると思っていて、業務で研究をやりつつ、博士課程の研究テーマとしてもそれを使っていくというので会社の理解を得られているので、僕としてはやりやすいかなと思います。

他の社会人ドクターの方とかは、会社の仕事とは別で研究を持たれている方もいて、結構大変そうで。そういう意味でサポートを受けられていて、ありがたいと思います。

様々なバックグラウンドを持った仲間との交流が視野を広げる

ー進学されて、何か変化はありましたか。

antipop:
そうですね。僕自身エンジニアとして10何年やってきて、やってきたことに対する経験は積みあがっているのですが、やっぱり大学院だと情報系の近接分野ではあるももの、バックグラウンドが全然違う方が、先生も含めて結構います。

なので、僕はWeb屋さんとしてある種経験に基づくバイアスみたいなのがあるので「こんな感じで考えている」と言うと全然違う方向から「いや、こういうのがあってね」みたいな、いろんな知見を得られてすごくよかったなと思います。

僕自身はやっぱり研究員の皆さんや、会社自体の技術を引き上げていくというのが自分のミッションだと思っているので、自分自身がいろんな視野を持たないといけないし、僕が凝り固まった感じだと良くないので、コロナ禍でいろんな人とお話できない中、様々な考えを得られたのは、いろいろな面で役に立っていると思っています。

miyakey:
もともと研究を推し進める力を高めたいなと思って入学しました。

これまで自分なりに一生懸命研究をやっていたのですが、量が足りなかったんだなというのを今思い知らされています。

例えば「既存の研究を調べます」とか、「論文の数をこれだけ出そうと思ってます」とか、「進捗としてこのくらいのスパンで考えてます」みたいなところに対して、ほとんど「この倍」とか「半分の時間で」みたいなことを言われて、さらに「これぐらいが普通ですよ」という感じで提示されるんですね。

論文を読む量も全然足りないし、「半年後にこの会議出そうと思っています」と言ったら「いや、もっと半分の期間で出せませんか」みたいなことを言われたりしていて、自分自身のスキルを伸ばすっていうのを当たり前にやるとしても、研究を一歩ずつ刻んで成果を出していくためにやらなくてはいけないことに対して、量という一つの軸のスケール感が全然変わってきました。

今まで量が足りなかったんだなってことを思い知らされて、そういうのに体を慣らしていっているところです。ただ「2ヶ月後に出してください」みたいなのは正直「マジで」と思うんですけど。笑 慣らしていきたいと思っているところではあります。

kurotaky:
入学するときに「こういうことをやりたいな」と思っていたことが形にできてきました。デバイスを作る時に「どうやって作るんだろう」っていうのは、たぶん大学院に行っていなかったらあんま想像できなかったです。

個人としてもブレッドボードとか電子工作的に市販のものを買って、LEDを光らせてセンサーをつないで動かすとかは今までやっていたんですけど、じゃあセンサー自体を作れるかっていうと、今までは作れなかったですが、今は「センサーとか回路ってどうやって作るんだろう?」という問いの答えが見えるようになってきました。

目の前の課題解決だけではなく、10年後も役に立つ解決策を考える

ーやっぱり入って良かったですか。

kurotaky:
入って良かったですね。何が良かったかって色々あるんですけど、僕はもともとずっとエンジニアでやってきて、とりあえず動くものを作るとかそういうところはできると思うんですけど、自分が面白いと思って「こういうのを作りました!」って先生とかにプレゼンした時に、あまり響かない時があります。

僕が思ってる面白いと思うものと先生が面白いと思うものがけっこう違ったりして。いま役に立つものを作ることも大事なんですけど「10年後に役に立つのか?」みたいなことを考えたり意識する軸を持つようになりました。

長期的なビジョンをもって、自分が作っているものがどう社会に活かされるのかを考えて作るのが大事なのかな、と思っています。

miyakey:
確かに、僕もWebエンジニア出身として目の前の課題を解決できることは楽しくて喜ばしいことだと思っていて、つい目の前の課題を今持っている技術で解決したくなるのですが、その解決方法は、汎用的・普遍的に考えられているのかや、きちんと説明できるかなど、別の視点でもう一度捉え直してみる、という視点を高めていかないといけないといけないと思っています。

ペパボ研究所のみんなも含めて、全員できるようになるとあらためて研究所としてのバリューを出していけるかなと思うので、そういうのは是非とも博士課程の間で学びとっていきたいなと思います。

ー今後大学院に進学を検討されている方にアドバイスはありますか。

miyakey:
入学前も後も、アウトプットをすることが大事だなと思っています。

研究はその場の思い付きでできるようなものではないし、研究の成果も頭の中にずっとあっても何も認めてもらえなくて「納得いかなくてもアウトプットを出す」ということをやり続け、「進んでいる」というのをちゃんと自他ともに認めてもらうことが大事だと思います。

僕も正直、研究者として納得いかないままやってきたところもあるのですが、結果実績として入学前に羅列してみたら「あ、それなりにやってきたな」って思えたし、それを認めてもらえて、入学に至った部分もあるので。

いつか大学院に入りたいと思うなら、入学に向けてやるぞと決めてやるより、普段から継続的にアウトプットしていくことが自分の支えになると思っています。

幸いにもペパボは「アウトプットすること」を大切にする文化があるので、ペパボに居れば、社会人博士課程も夢じゃないと思います。

世界の研究者の方と競っていけるようになり、その過程で得た専門性を会社や社会へ適用させる

ー最後に今後の意気込みを教えてください。

antipop:
研究に対する意気込みでいうと、僕はまだ修士課程なので、研究ということに対して何も特に言うべきことはないです。

研究者というルールにのっとって言えば、運転免許がまだ今ない状態です。大学院というのは別に学歴の問題ではなくて、自動車学校に行ってるみたいな感じなんです。

学歴を高めて成長したいとかキャリアの話ではなく、研究者としてやっていくために、“免許”が必要だとされているので、まずは免許証を取れるようにする、っていうのがあります。

そのうえで自分自身がペパボ研究所の所長、あるいはCTOとして、皆さんの活動がより高いレベルになるように支援して、会社としても技術的な能力を上げていくことに貢献するためにも、僕自身もプレーヤーとしても、それなりに同じ土俵で議論できるような人間にならないと、そういうこともできないのかなと考えているので、そういう意味でみんなと一緒に頑張っていきたいなと思ってます。

miyakey:
意気込みしては、博士号の取得を予定の3年で取得できるようにきちんと研究を前進させていく、そして都度ちゃんと発表をしていくことをやれるようにしていきたいです。

その中で僕に与えられてるミッションは、研究のみを進めるというよりは、サービスへ適用していくところを求められていると思っています。

研究とサービス適用のバランスをとりながら両立していって、「ペパボ研究所があって良かったね」と短期的にも長期的にも言ってもらえるよう、やっていきたいなと思っています。

kurotaky:
僕も3年で博士を取得したいと思っていて、そのためには結果を出さないと博士ってとれないので、まずは結果を出すぞと思っています。

今の僕だと「こういうのやってます」と報告をして、先生に「こうじゃないですか、違うんじゃないですか」と言われたら、「確かにそうかもしれない」と思ってしまうのですが、それでは博士じゃないと思うので。

自分のやっている研究をしっかり形にして、その専門家として自信をもってその成果を主張できるようになるぞというのが意気込みですかね。

それができたらたぶん博士になっていると思うし、そうなりたいなと思って。世界の研究者の方としっかり競っていけるようにしていって、その過程で得た専門性を会社や社会へ、応用できればと思っています。

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