会社と働く人が互いに関心を持てる仕組みをつくる~ペパボ流wevoxの活用法~

リモートワークでは、働くパートナー同士が直接顔を合わせる機会が少ないため、パートナーの状況を可視化することが大切と言われています。ペパボでは、2017年から、サーベイツール「wevox」を導入し、コロナ禍においてオフィス出社の回数が限られる中においても、毎月1回のアンケートを通じて、パートナーのエンゲージメントを可視化できる仕組みを整えています。

今回は、HR統括部の船橋副部長に、wevoxの導入から現在までのどのような運用をされてきたか、コロナ禍でもエンゲージメントが高い組織をどのようにつくるのかについてインタビューしました。

自己紹介

船橋 恵(ふなばし めぐみ)
あだな:ばしえ、ばっしー
Twitter:@megsorin
HR統括部 副部長。最近ハマっていることはコストコで買った韓国海苔フレークを何にでもかけることです。

運用は、できるだけオープンに

-どんな目的でwevoxを導入されたのですか?

ばしえ:
「事業とパートナーの有機的成長の支援ツール」として、組織の状態を正しく把握し、より良い組織づくりに活用することを目的に導入を行ないました。2017年に一部の部署から導入し、2018年2月から全社に範囲を広げる形で展開を進め、現在も活用を続けています。

-現在、wevoxはどのように運用されているのでしょうか。

ばしえ:
毎月1回、第2月曜日をサーベイ配信日として定期的に全パートナー(正社員、契約社員、アルバイト)を対象に回答してもらっています。回答結果(個人スコア)の閲覧は、部門内のマネジメントメンバーとHRのwevox担当メンバーまでとし、パートナー自身は、セルフマネジメントツールとして、また、マネジメントメンバーはチームマネジメントツールとして利用しています。また、毎月1回、全パートナーへのフィードバックとして、全社および各部門のスコアと回答率、フリーコメントを公開しています。

-フリーコメントとは、どのようなものなのでしょう。

ばしえ:
wevoxは、決められた設問項目以外に、フリーコメントの質問を設定できる項目がありまして、その質問は、HR統括部で「季節性のあるものや話題性のあるトピック」をテーマに毎月質問を変えています。過去の質問では「緊急事態宣言が解除されたらやりたいこと」や「『睡眠』に関して気をつけていること」といった質問を行いました。また、フリーコメントについては、回答者名や回答内容もすべてオープンにし、全社に公開をしていることもペパボの活用の特徴です。

-回答者名を含めて、フリーコメントの回答を全社公開されているんですね。

ばしえ:
はい。全社フィードバックの意図としては、情報をできるだけオープンにし、回答をブラックボックス化させないことで、自分自身やチーム、会社の状態に関心を持ってもらうことにあります。フリーコメントの回答は、たまに「これって大喜利コーナーだったっけ?」と思うようなボケ要素高めの回答もあり、運用担当としても毎回楽しませてもらっています。

全社に共有しているフリーコメント。時に大喜利コーナーのようになることも

一時期は回答率が60%台まで低迷

-月1回のサーベイを実施することについて、パートナーの反応はどうですか?

ばしえ:
wevox導入当時、特にネガティブな反応はなくスムーズにスタートできたと記憶しています。その背景として、基本的にペパボパートナーは新しいことへの取り組みやトライに対して、まずはポジティブに受け入れる文化があります。パートナー一人ひとりがペパボという会社を作っており、個々のエンゲージメントが重要であるという目的やメッセージを添えたことでしっかりと受け取ってくれたのだと思います。現在では、すっかり月1の回答が定着し、習慣化したように思います。とはいえ、まだまだ回答率に課題のある部署もあり、回答しないことが習慣化してしまっているパートナーも一定数いることも事実です…。(ぴえん)

-導入から現在までの間、運用にあたって苦労された点はありましたか

ばしえ:
一時期、全社の回答率が低迷していた時期がありました。また、当時のフリーコメントは、会社への要望・ご意見を受け付ける項目として運用していたため、パートナーから寄せられる意見や要望への対応にHRの調整業務の比重が高くなってしまっていたことも課題としてありました。

これはいずれも同時期に発生していたことで、突き詰めると同一の課題であったと考えています。具体的には、情報が一部ブラックボックスになってしまっていたことだと思っています。そこで、2020年2月より、できるだけ多くの情報をパートナーにフィードバックすること、また、フリーコメントではポジティブな情報やナレッジをシェアする機会にできるよう運用を改めました。

改善前のフリーコメント欄。「匿名対応」の旨が記されている


改善後のフリーコメント欄。「記名公開」としナレッジを全社公開する形に運用を改定

運用変更により、フリーコメントでは毎回お役立ちチップス情報や楽しいコメントが集まるようになり、一時60%程度まで落ち込んでしまった回答率も現在では80%以上を維持する程度に改善しました。(決して高い回答率とは言えませんが…。ぴえん)

コロナ禍において「先が見えない不安」をいかに最小化できるか

- 2020年6月からペパボはリモートワークを基本とする働き方に移行されていますが、エンゲージメントの数値や活用方法に変化はありましたか?

ばしえ:
リモートワークに体制移行したことが要因かは判別が難しいですが、スコアは全体的に緩やかな上昇傾向にあります。その中でも、リモートワーク体制になってから上昇率が他の項目と比較して高く出ているのは、「理念戦略」のキードライバーの「会社の方針や事業戦略への納得感」及び「経営陣に対する信頼」の数値です。

これはコロナ禍において、比較的早期に働き方の体制変更が全社に示されたことや、体制変更に応じて必要な制度の適用や取り組みがなされ、細やかに情報共有されていることが要因にあるのではないかと考えています。パートナーやサービス利用者が抱える「先が見えない不安」をいかに最小化できるか、という視点で社内や事業の施策がスピーディーに意思決定されたことがパートナーの安心につながったのではないかと思います。

昨年4月に公開した、インターネットを活用する事業者を応援する特設サイト

また、東京、福岡、鹿児島の各拠点分け隔てなくオンラインで全社共有がシームレスに行えるようになり、情報格差が生じにくくなったことも要因にあるのではないかと考えています。

wevoxの活用方法は基本的には変わりません。ただ、以前のようにオフィスに一堂に会することは減ったため、物理的にパートナーの表情や様子が目に入る機会は減っています。そのため、マネジメントメンバーには1on1やチームコミュニケーションをしっかり行なうことは大前提として、チームやパートナーの状態を把握するためにwevoxの数値の推移(=変化)には敏感になってもらいたいと伝えています。

- コロナ禍の今、運用面で注視しているキードライバーや、力をいれていることはありますか?

ばしえ:
基本的にはセルフマネジメントやチームマネジメントの活用ツールのため、HRがすべてのスコアをくまなくチェックすることはありません。しかし健康のスコアは勤怠データと併せて注意を払っています。客観的にデータとして現れるスコアから変化を読み取り、懸念がある場合はマネージャーに声がけをすることもあります。

互いに責任をもって切磋琢磨する関係を目指して

-コロナ禍でも、企業がエンゲージメントの高い組織を作っていくために、大切なことは何でしょうか。

ばしえ:
やはり毎日オンライン飲み会をすることじゃないでしょうか。…と、冗談はさておき。個々が自律的であること、また、技術・経験・働き方・様々な特性をもつ多様な人材が活躍できる環境でありながらも、会社や事業、チームへのコミットメントとしての求心力を働かせることだと思います。

wevoxにログインする際に従業員満足度とモチベーションとエンゲージメントが異なるものであるメッセージが目に入ります。wevoxの運営会社であるアトラエさんがその点を目に留まりやすい場所に表示させているのは、会社もパートナー(従業員)もその意味をしっかり理解することの重要性を提示しているのだと思います。エンゲージメントとは、「従業員一人ひとりが組織に愛着を持ち、従業員と企業が一体となってお互いに成長し合い絆を深める関係」であると示されています。与えたり与えられたりの関係ではなく、会社もパートナーも目指すべきものに共に向かい、互いに責任を持ち、切磋琢磨する関係であり、その関係性をよくしていくためには、みんながんばっていこうぜ!ってことなんだと思います。

-最後に、ペパボで働いてみたい!という方へ、メッセージをお願いします。

ばしえ:
市場の動向、組織の状態や人々の働き方が目まぐるしく変化していく環境の中で、自分自身のコンディションを良い状態に保つことはビジネスパーソンとしての必須要件であると思います。自律的であることが重要だと先述しましたが、自律やコンディション管理というのは、決して自身を厳しく律することだけではなく、ペパボでは「みんなと仲良くすること」「ファンを増やすこと」「アウトプットすること」を楽しむことができること、というのも含まれると思っています。

ペパボはサービスを通してたくさんのクリエイターの背中を押し、多くのクリエイターの可能性を広げています。もっともっと人々のクリエイティブを引き出し、人類のアウトプットを増やしていきたい!絶対!やってやるんだからぁぁああああ!!(叫び)と、冗談はさておき、なんだかおもしろそうだと思っていただける方はぜひ「ENTRY」ボタンをポチッとしていただけると嬉しいです。