デザイン組織の運営を加速させるデザインプログラムマネージャーというロール

GMOペパボの組織体制は事業部制で、それぞれの事業部にデザイナーが配属されています。そのなかで、デザイン部は組織横断チームとして各事業部と関わり合いながら、会社全体のデザイン面での取り組みの方針を策定したり実施していく役割を担っています。

今回は、デザイン部がどのように組織的なデザインに取り組んでいるのか、またそこでデザインプログラムマネージャーがどのような仕事をしているのか、お話を聞きました。

自己紹介

小久保 浩大郎(こくぼ こうたろう)
あだ名:こたろっく
Twitter: @kotarok

執行役員CDO兼デザイン部部長。音楽好きです。いろいろ聴きますが最近興味あるのはリディアンクロマチックコンセプト、微分音、ネガティブハーモニー、下方倍音列、ポリリズム、物理モデル音源などです。

望月 美憂(もちづき みゆう)
あだな: mewmo(みゅーも)
Twitter: @mewmoppel

デザイン部コーポレートデザインチームのデザインプログラムマネージャー。三度の飯よりアニメ・漫画、これまで見たアニメはTV・映画含め2022年3月末時点で合計703本。今期春アニメで一番楽しみなのはSPY×FAMILYです。

デザイナーがもっとデザインできる環境へ、横断組織として取り組みをスケールさせていくために

- デザイン部と各事業部のデザイナーの関係はどのようなものなのでしょうか

kotarok:
ペパボは複数のブランド・サービスを提供している会社です。個性あるブランドでそれぞれの市場に最適なアプローチを取ることは重要ですが、時としてそれぞれのサービスが抱えるデザイン課題や取り組みが重複することもあります。横断組織と事業部が相互に関わり合いながらそれらを集約的に解決しようというのがデザイン部の目的のひとつになります。

具体的な関わり方で言うと、たとえばデザインシステムの開発・運用などはデザイン部主導でプロジェクトを立ち上げて事業部のデザイナーにもコミットしてもらいながら推進していますし、逆にサービスのブランドビジョンの策定や広告戦略の立案など事業部の一部のプロジェクトにデザイン部のメンバーが参加して一緒に取り組んだりすることもあります。

またそもそも経営方針におけるデザイン課題や活用の観点から全社的なデザイン戦略を定め、それを各事業部で実行するための材料やトレーニングを提供していくのもデザイン部の重要な役割です。

mewmo:
デザイン組織としてデザイナーの育成プログラムを設計したり、デザイナーのバリューを最大限に発揮するためにデザインプロセスの構造化を行ったり、評価基準や採用基準をアップデートしたり…組織づくりの面でもデザイン部が主導しながら事業部デザイナーと一緒に取り組んでいますね。

- デザイン部の中にデザインプログラムマネージャーを設置しようと思われた背景について教えてください

kotarok:
ここまでに話に挙がったような取り組みは、いわゆる「手を動かしてデザインする業務」だけではスケールしないんですよね。部署間でのコミュニケーションや調整業務、環境づくりなどこれらの仕事をうまくいかせるための「メタ業務」のようなものが発生するんです。これらを両立するのは大変だし、さらに言えばメタ業務のコストは流動的で明示的ではなかったりするので、だんだん取り組まれなくなってくる…というのはありがちなパターンです。

以前私が在籍していたGoogleでは、そのメタ業務を専業でこなしてくれるプログラムマネージャーという職種の方がチームにいたんです。その方がいてくれることでチームとしての業務がとてもスムーズに回っていたという経験があったので、ペパボでも組織的なデザインアクティビティを強化しようとしたときに、同様のソリューションを活用しようと思いました。

デザイン組織を円滑に運営するうえでデザインの知識やバックグラウンドがありつつもメタ業務に適性がある方を探していたところ、ちょうどmewmoさんと出会って、結果的にペパボにジョインしてもらうことができました。

mewmo:
学生時代に広くデザイン分野を専攻した後、前職は建築系書籍の編集者をしていたので、これまでの経験を活かしながらデザインプログラムマネージャーとしての仕事に取り組んでいます。

メタ業務からデザイン組織を支える、デザインプログラムマネージャーの担う役割とこれまでの取り組み

- デザインプログラムマネージャーは具体的にどのようなことを行うポジションですか

mewmo:
デザイン組織のつくりかた』という書籍で述べられている文言をお借りして紹介すると、デザインプログラムマネージャーは、「クリエイティブな品質とは別に、デザイン以外の部門とのコミュニケーションを担い、デザイナーが本業に集中できるようにして、デザイン組織の有効性を最大限に高めることを役割としている。」と定義されています。

具体的には、デザイナーの育成や、他部署と仕事をする際のワークフローやデザインプロセスの整備、プロジェクトの進行管理やリソース調整、デザイン広報、組織的なデザインナレッジのストック…など、デザイナーがデザインワークに集中できるように、またデザイン組織として成果を最大化するために、デザイナーを取り巻く環境や場を整備・仕組み化したり、部署をまたぐコミュニケーションを担ったり、というのが主な仕事内容です。ここ数年でよく耳にするようになった「DesignOps」的な役割とも言えるかもしれません。

Definition: DesignOps refers to the orchestration and optimization of people, processes, and craft in order to amplify design’s value and impact at scale.
(定義:DesignOpsは、デザインの価値と影響を大規模に拡大するために、人、プロセス、技術を組織化し、最適化することです。)

DesignOps 101

- 実際にペパボではデザイン組織としてどのような取り組みをおこなっているのでしょうか

kotarok:
DesignOps Handbook』ではDesignOpsの領域をワークフロー、ピープル、ガバナンス、ツール&インフラの4つに分類しています。

出典: 『DesignOps Handbook

どの領域でもデザインプログラムマネージャーが活躍してくれているのですが、特にガバナンスとピープルで力を発揮してもらってます。どちらも人との関わりが強く抽象度が高いですよね。私たちが組織として同じゴールやミッションを見据えて動くためには、目的やストーリーを共有したり、共通言語を持ってコミュニケーション密度を高く保ったり、行動や判断の規範を共有している必要があります。これらは「文化」と呼ばれることもあります。文化を醸成するには規範や指針などの決め事をただ形式的に共有するだけでは行動の変化には至りません。ポイントは『「自分たちがそれらの内容を知っている」ということをお互いに知っている』というメタ認知を作り出すことだと思っています。

mewmo:
たとえば、デザインプリンシプルが策定されていて、それらの内容だけSlackで共有されていたとしても、それだけで「じゃあデザインプリンシプル活用していくぞ」とはならないですもんね。実際に使ってみよう、参考にしようとチーム内で言い出せる状況を作っていかなければ、活用していくのは難しいですよね。

kotarok:
そうなんですよね、相手が知らないかもしれない新しいことを言い出すのは勇気がいるし抵抗があります。コミュニケーションをお互いにとりやすくしていくためにもデザイナー全員が同じ時間や場所、体験を共有しながら、同じ共通認識を持つ機会をつくることは重要です。そうした機会として、ペパボでは半年に一度のデザイナー全員が参加する共有会「Designer All Hands」や、隔月で社内デザイナー勉強会「Designer’s MTG」を開催しています。

mewmo:
でもここまでのことを踏まえてちゃんと場をつくってやるぞー、となると、つまるところイベントの企画・運営をやることとほぼ同じなので、開催するには熱量や稼働コストがかかります。それを現場でバリバリ業務をこなすデザイナーが片手間でやるのはとても大変だし、続かなかったりします。私がそこを自分の業務としてOKRに入れて取り組むことで、良い形で分業ができているように感じます。

kotarok:
ここを専任でやってくれる人がいるというのはすごく心強くて助かるし、組織としてのサステナビリティにつながってます。

あとは採用につなげるための広報的アウトプットや、同じ業界の会社同士での交流など、いろんな側面でリードしてくれているので、それも助かってます。クライアントワークと違って自社サービスの会社ではどうしても業務で触れるドメインや人が狭くなってしまうので、外の人と積極的に触れ合って自分たちを客観視する機会は重要だと思っています。

mewmo:
社外の方と意見交換して知見や学びを得ることでデザイナーのアウトプットの向上につながると思うので、社外の方と交流しながらそうした機会の場づくりに取り組んでいます。実際にデザインシステムの開発などでは他社事例から得た学びをヒントに業務に活用できている場面も見かけました。

kotarok:
ほかにもデザイナー育成の一環としてデザイナーの専門性を言語化した「エキスパートスキルエリア」を策定することでデザイナーがスキルアップの方針を立てられやすくなったり、事業部の垣根を越えて専門性の高い領域に対する問題解決を行いやすくなりました。また事業部のビジョンやミッションに沿った中長期的なデザイン戦略立案や体制づくりを担うポジションとして「デザインリード」を新設したり、ECデザインチームを組成したりといった組織面からのアプローチも行っています。

- 実際にそのような取り組みによって、ペパボのデザイナーにどのような影響がありましたか

kotarok:
デザイナーが組織的なデザインの方向性を踏まえたうえで、その取り組みに納得感を持って参加しやすくなったと思います。また組織としてInhouseの導入に取り組むことによって、古いままだった開発の足回りをアップデートしてモダンで素早い改修が行えるようになったりしています。もちろん再利用可能なコンポーネントや意思決定のヘルプとなるガイドラインが生産性向上に寄与していることは言うまでもありません。そのほかにも、考え方のフレームやその要素を表現する言葉を組織として共有蓄積することで、議論や意思決定をより建設的で精度の高いものにアップデートできています。

会社全体で組織としてデザインしていくために、「デザインする」ことの理解を拡大させる

- 今後デザイン組織として挑戦していきたいことがあれば教えてください

kotarok:
他部署やデザイナー以外の職種のパートナーとのコミュニケーションを強化して、「デザインする」ことの理解と実践を組織全体に拡大させていきたいと考えています。

組織全体でデザインに取り組んでいくためには、まずダブルダイヤモンドのようなデザインプロセスをしっかり活用していく必要があります。この図はざっくり言ってしまうと左側が Whatの話で右側がHowの話です。もちろんどちらも大切ですが、どうやるかよりも何をやるかの方が結果に対するインパクトファクターとしては大きくなりえます。ここをデザイナーだけでなく職種を超えてしっかりデザインしていくことが今後の成長のために欠かせません。その時デザインプログラムマネージャーの存在は今にもまして重要になると考えています。

出典: ペパボテックブログ「『デザイン思考』という言葉にデザイナーとして改めて向き合って考えた結果得られたも

- ペパボのデザイン組織でアピールしたいことがあれば教えてください

mewmo:
複数のサービスを効率的・効果的に運営していくために、縦割りの事業部だけでなく組織全体の横串を通すデザイン部のようなチームがあります。それによって事業部のデザイナーも1つのサービスに従事しているだけでは得られない異なる視点や立場からのフィードバックや学びを得られたりします。

デザイナーとしての専門性を活かす、事業のビジョンにコミットする、デザイン組織として構造的な成長に取り組む…組織体制の特性上、さまざまなスタイルでデザイナーが仕事をできるのが、今のペパボの魅力のひとつと言えるかもしれません。

- デザイン部ではシニアデザイナーを募集していますが、こんな方と一緒に働きたいというものはありますか

kotarok:
デザイン部に限らず各事業部でデザイナーを募集していますが、これまでに話したようにペパボでは事業部に所属するデザイナーと横断組織であるデザイン部のデザイナーがともにペパボ全体のデザインの活用と成果へのコミットに取り組んでいます。これまでさまざまな経験を積んだシニアクラスの方や、これからデザインという仕事への取り組みをアップデートしたいと考えている方にはどちらの面からも取り組めます。そこにおもしろさを見出して取り組めるような人と一緒に働きたいと思っています。またデザイン部だけでなく各事業部でもさまざまな尖った専門性を持ったスペシャリストをお待ちしています!

mewmo:
興味をお持ちいただいた方はまずはカジュアルにお話できればと思いますので、お気軽にお声掛けください!

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