リモートならではの利点と葛藤とは?SUZURIの新機能「シルクスクリーンTシャツ販売」リリースの裏側

イラスト・写真をアップするだけで、誰でも簡単にオリジナルグッズの作成・販売を行えるサービス「SUZURI」。2020年6月に実施したTシャツセールでは、過去最多となる11万枚以上の受注を記録し、対前年同月比347%となる4億円超の流通額を達成しました。
そんなSUZURIでは、6月から新たにシルクスクリーンTシャツの販売機能をリリース。今回は、機能リリースに関わった3名のメンバーにお話を伺います。

長峰 健太(ながみね けんた)
Twitter:@pecolozy
あだな:ながみ
SUZURI事業部 ディレクター。最近の趣味は毎日の食事を記録すること

河出 葵(かわで あおい)
Twitter:@shirtskirt
あだな:まじじ
SUZURI事業部 デザイナー。外出自粛中にNetflixのドラマ『セックス・エデュケーション』にどハマリし、まだロスが終わっていない。

安宅 啓(あたか ひろし)
Twitter:@atakaP
あだな:あたか
SUZURI事業部 部長。最近ヘルシオスチームオーブンを買って料理の機会が増えた。

「気軽に作れない」シルクスクリーンをもっとかんたんに

ーシルクスクリーンTシャツの販売機能は、いつごろから温めていたアイデアなんですか?

ながみ:
プロジェクトが動き出したのは2019年の秋ごろからですが、「シルクやりたいよね」っていう話は以前からありました。
ただ、クリエイターさんがシルクスクリーンのアイテムを無在庫で作成・販売できる機能をSUZURIで提供するには、解決しなくてはならない課題がいくつもあったので、なかなか動き出せずにいたんですよね。

ーどのような課題があったのでしょう。

ながみ:
一番大きかったのが「小ロット注文への対応が難しい」という問題でした。
通常、SUZURIで提供しているアイテムは1枚から作成することに適した印刷方法を採用しています。これは紙にインクがプリントされるのと同じ仕組みで、直接Tシャツにインクを吹き付けていくので、色数を気にせず作成できます。

一方シルクスクリーン印刷は、発色のよさや耐久性などに優れていますが、使用するインクの色ごとに製版をしなくてはならず、コスト面の問題で小ロット注文には対応するのが難しく、その点をどう解決すればいいのかと悩んでいました。

ーある程度多く売れないと、製版コストで損をしてしまう?

あたか:
そのとおりです。それでもいずれはSUZURIのメニューとして提供したいと考えていたところ、ながみが具体的な解決方法を提案してくれました。サービスメニューとしてユーザーにたくさん利用してもらえそうな期待もできたので、プロジェクトとして挑戦することにしました。

ーおおっ。その解決方法、気になります。

ながみ:
海外のオンデマンドプリントサービスなどを参考に、「一定数の注文があった場合はシルクスクリーン印刷にして、一定数に届かなかった場合はこれまでSUZURIでも採用してきたインクジェット印刷(白引き有り)で作成する」という仕組みを、チームメンバーと一緒に考えました。これなら、購入者さん側は他に注文が集まらなくても自分の注文した商品がキャンセルされてしまう恐れがないうえ、クリエイターさん側も、初期費用を負担したり在庫を抱えたりせずに済みます。ここから少しずつ敲きを作っていった感じですね。

ーこれまで、クリエイターさんがシルクスクリーンに挑戦するのは難しかったのでしょうか?

ながみ:
そうですね。従来、クリエイターさんが個人でシルクスクリーンに挑戦するには、製版代やインク代など制作に関わる費用の負担のほか、自分で在庫を抱える必要がありました。さらに、どのサイズがどれくらい売れるかの見積もりや、梱包・発送の壁もあり、なかなか気軽には始められないものだったと思います。

たとえば、イベントに向けて多めに作ってみたら1サイズだけが売れ残ってしまい、後日値下げして販売せざるを得ない……というケースもあるようです。他にも、クリエイターさんへヒアリングを重ねるうちに、アパレル商品には在庫保管の問題がどうしてもついて回ることがわかってきました。

ー「在庫保管の問題」とは具体的にどういった問題ですか。

ながみ:
ステーショナリーや缶バッジなどの小物と違って、アパレルはかさばる上、サイズやカラー展開によってはSKU(受発注や在庫管理を行う際に用いる、最小の管理単位)もどんどん増えてしまいます。自宅やアトリエにたたんで保管しておくとシワがつきやすいのも面倒、といった声が多く聞かれました。

ーなるほど。たとえば3カラー×3サイズの場合、20枚ずつ作っただけでも180枚の在庫になってしまいますもんね。確かに自力で保管するのは大変そうです。

あたか:
今回の開発における大きな狙いは、シルクスクリーンTシャツだけに限らず、大ロットでの製造が必要なアイテムを無在庫・ノーリスクで販売できる仕組みづくりなんです。今後は、未対応の「刺繍」をはじめとした幅広いアイテムにこの仕組みをどんどん横展開していければと考えています!

クリエイターとの共同作業はすべてリモート

ーシルクスクリーンのサービスページ、とってもユニークでかわいいですよね。見せ方でこだわったポイントを教えていただけますか。

まじじ:
今回は初めての挑戦として、ページ内の構成要素を3名のクリエイターさんに描き下ろしていただきました。「シルクスクリーンができるようになる」というのはサービスにとっても大きな節目の出来事となります。これまで一緒に刺激し合って前に進んできたクリエイターさんたちとひとつのものを作りたい、という気持ちが強くありました。

シルクスクリーンのサービスページより抜粋

そういった思いもあり、参加クリエイターさんのクレジットは、バンドのメンバー紹介や映画のエンドロールのように大きく取り上げたい!と考えて、一人一人フィーチャーするような構成にし、世界観に余韻を持たせるアニメーションアイコンを描き下ろしていただきました。リリース後は、そういった部分にもSNSで反響をいただけたのが嬉しかったです。

ークリエイターさんとの共同作業はどんなふうに進めていったんですか?

まじじ:
今回のサービスページの狙いは、従来のシルクスクリーンとは大きく異なる手軽さ・イージーさを視覚的に印象づけることでした。そこでまずは、実際にシルクスクリーンとして刷るのにも適したシンプルな表現を得意とするクリエイターさんにご協力をお願いしました。

ながみ:
クリエイターさんの持つ個性はきちんと保ちながらも、機能の特徴はおもしろく伝えたかったので、過去作品などを事前に調べたうえで僕たちでラフスケッチを持ち込み、こういう形にしたいんですがいかがでしょうか?と一つ一つ相談しながら作っていきましたね。

ーそれらのやりとりは全てリモートですか?

まじじ:
そうです。リリースまで一度も直接お会いせずに行いました。
ですが、文章だけでは伝わらない細かなニュアンスまで綿密にやりとりしたかったので、お一人ずつ数回のリモートミーティングを設定し、資料を画面共有しながら打ち合わせを進めました。リアルタイムでお互いの作業環境を共有しながらすり合わせをしたり、説明に使用した資料を議事録兼依頼テキストとしてお送りしたり……。ご足労いただくことなくしっかりとコミュニケーションできたのは、リモートならではの利点だったかもしれません。

ーふむふむ。逆にリリース準備で困ったことはありましたか?

ながみ:
新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況だったので、予定していた写真撮影を何度もリスケせざるを得なくなり、もう祈ることしかできないっていう時期がつらかったです。緊急事態宣言が解除されたタイミングで1日スタジオに入って撮影しましたが、この日を迎えられたことが嬉しすぎて、それまでリモートでやりとりさせていただいていたカメラマンさんとヘアメイクさんの顔を見た瞬間泣きそうになりました。

ーなんとか進められてよかった……。今回のサービスページ制作、クリエイターさんにも初めて参加していただいて、手応えのほどはいかがでしたか?

まじじ:
これまでのSUZURIは、アイテムのデザイン協力という形でクリエイターさんの力をお借りすることが多かったのですが、初めてサービスページのクリエイティブにも参加していただいたことで、SUZURI自体が発信できるサービスの印象や世界観、メッセージの幅が大きく広げられたんじゃないかなと思います。わたしたちだけではできない広がりを感じたというか。

あたか:
過去のプロモーションでも、クリエイターさんを巻き込みながらものづくりに取り組んできました。サービスの中にいる僕たち自身もクリエイター気質を持ってものづくりに取り組むのもSUZURIチームのよさのひとつと感じています。

ーチーム内で、そういった共通認識を持つために行っていることはありますか。

ながみ:
特に意識して行っていることはないですが、SUZURIから外に発信するもので、創り手であるクリエイターさんが損をしたり、嫌な気持ちにならないかなどを踏まえた上で会話がされていると思います。

まじじ:
SUZURIはクリエイターさんとお互いに刺激し合える存在でありたいと考えているので、たとえば何か一つアイテムを出すにしても、クリエイターさんが「このアイテム、自分だったらどんなふうに作ろうかな?」と創作意欲が刺激されるかどうかを意識して、チームメンバーと話し合っています。

ー暗黙のものになりやすい価値観がチーム内でしっかりと共有されているのは、わかりやすくていいですね!

在宅勤務でもチームワークを保つための工夫

ー1月下旬に在宅勤務へと切り替わってから約半年、チームの動きに変化はありましたか。

ながみ:
オフィスで働いていた頃は人数が少なかったこともあり、僕たちは困ったことがあれば都度口頭で相談っていうスタイルで、朝会・夕会や定例ミーティングの場を設けてはいませんでした。みんなモニターを置かずに同じテーブルで作業していたのでお互いの顔も見えるし。
でも、在宅勤務に切り替わると「今ちょっといいですか?」とラフに話しかけるのがどうしても難しくなったなと思います。

ー相手が今何してるのか、見えにくくなりますよね。

ながみ:
ですね。それで定例ミーティングのようなものを試しに始めてみて、最終的には夕会という形で、「今日こんなことやった」とか毎日話すようになりました。ゆるい雑談の場なので、夕会の流れでそのまま退勤してみんなでゲームしたこともありました。

まじじ:
他にも「デジタルチームランチ」とか「デジタル雑談会」など、チームのコミュニケーションの機会を作るべく、みんなでいろいろ試行錯誤しているところです。

ーいろいろ試してみた中でよかったものはありますか?

まじじ:
最近、Zoomで新しく入社した方の歓迎会を開いたのが楽しかったです。
大人数が揃っても話しやすいように、幹事が何人かごとに部屋を振り分けてくれるんですけど、Zoomって無料プランだと40分で時間切れになっちゃうんですよ。だいたいいつも話が盛り上がってきて、誰かがいい話をし始めた瞬間に強制終了で解散になっちゃう(笑)。

ー(笑)。

まじじ:
「またいいところで終わったよ……」っていう(笑)。だんだんその虚無感がみんなクセになってきて、また次の部屋を作って集まったり、そんな新しい楽しみ方は生まれました。

あたか:
そういえば夕会をやるようになってからは、毎日チームメンバーが1曲ずつ持ち寄ってSpotifyでプレイリストを作ってますね。

ながみ:
同じチームのゆうたさんが始めたものなんですけど、週5日×チームメンバーの人数で「今週のプレイリスト」を作ってます。それを作業用BGMにしたりとか、チーム外の人が夕会に参加してくれた日は、その人のおすすめの曲も入れてもらってみんなで楽しんでます。

まじじ:
直接顔を合わせて雰囲気を共有する時間がなかなか持ちにくいので、正直難しさを感じることもまだまだ多いです。
SUZURIは「遊び」の中から次のアイデアがどんどん生まれていくサービスなので、どうすればそのよさをリモートでも失わずに済むのか、どう新しい形でやっていくのか、チームとしてもまだまだ模索中ですね。

ーリモートという新しい環境から生み出されるSUZURIの今後の展開がいっそう楽しみになりました。今日はありがとうございました!

 

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